【獣医師監修】愛犬•愛猫にとって水が大切な理由とは

【獣医師監修】愛犬•愛猫にとって水が大切な理由とは

今回は、水の大切さについて、ペット情報メディア「PECO」の記者が獣医師の先生に伺いました。

監修者プロフィール

  1. コンパニオン・アニマル・センター センター長<br />
アニマル・メディカル・センター 院長<br />
コンパニオン・アニマル・センター(CAC)<br />
/ Companion Animal Center (cac-animal.jp)<br />
<br />
ヤマザキ動物看護専門職医短期大学 准教授<br />
麻布大学卒 <br />
学士(獣医学)・獣医師<br />
日本獣医がん学会Ⅱ種認定医

    高柳 信子(たかやなぎのぶこ)先生

    コンパニオン・アニマル・センター センター長
    アニマル・メディカル・センター 院長
    コンパニオン・アニマル・センター(CAC)
    / Companion Animal Center (cac-animal.jp)

    ヤマザキ動物看護専門職医短期大学 准教授
    麻布大学卒
    学士(獣医学)・獣医師
    日本獣医がん学会Ⅱ種認定医

犬や猫にとって、水はなぜ大切なの?

水分は、犬猫共通して体の60~70%を占めており、血液や唾液などの体液をつくる役割の他、食べ物の消化吸収や、体内で生じた老廃物を排出する代謝機能の役割もあります。また、体内の体温調節にもなくてはならないものです。

体の水分が10%失われると、内臓や脳の機能が低下するなど、体に様々な不調が生じ、さらには15~20%以上が失われると死に至ることもあります。そのため十分に水分を摂取することが大切です。

日常生活で犬や猫が水分不足になる場合、夏場で多いのは熱中症による脱水症状です。犬や猫は人間と汗腺の構造が違うので、汗をかいて体温を下げることができません。また、冬の暖房がききすぎて乾燥した室内でも、隠れ脱水が起きることがあるため注意が必要です。寒暖の差が激しい春先なども、日中急に温度が上がり換気が悪いと熱中症になることがありますので気をつけましょう。

また、真夏ではなくてもしめ切った車内は、熱中症の危険があるので十分に気をつけていただきたいです。

次に犬と猫それぞれ注意しておきたいことがありますので、知っておきましょう。

犬の注意点

夏は冷房で乾燥して喉が渇くといった感覚が鈍いこともあり、夏の冷房が効いた室内では体温があまり上がらず飲水量が減ることもあります。

特に、フレンチブルドッグ、パグなどの鼻の短い短頭種の犬は、温度変化で呼吸がしづらくなり熱中症になりやすいのでより気をつけてあげましょう。

また、歯肉炎や口内炎、腫瘍などで口の中に痛みがある場合や、下痢や嘔吐などの消化器症状、食欲不振などの体調不良の場合は、水分不足になりやすいので気をつけてあげてください。

猫の注意点

猫は新鮮なものを好む食性があり、広い場所の水や流れている水を飲みたがることがあります。それは汚れたものを飲むことで命の危険につながることを防ぐための野生の習性です。そのため、水飲み容器の水が汚れている、鮮度が落ちている、容器が気に入らないなどで、水分が不足することがあります。

また、口内炎の痛みで水分摂取量が減ることがあります。シニア猫や病気などがある猫の場合は、日頃から注意してあげましょう。

水が足りないと起こりやすいリスクはあるの?

飼い主さんからよく聞かれるのが、水分不足になると、犬や猫にどんなリスクがあるかということです。

前述したように、水は体内の重量の10%の水を失うと生命の危機が生じると言われており、不足しないよう注意が必要です。人と同様、飲水量が減ると、体に様々な不調が現れます。犬猫共通して主なものは、熱中症、脱水症状、尿道結石、便秘、歯周病の悪化などです。水分不足のサインとして知っておいていただきたいのは、動きが悪くなる、おしっこの量が減る、目の輝きや潤いがなくなる、口が乾くなどです。このような症状が現れたら、水を与えて動物病院を受診しましょう。

水の適量とはどれくらい?

どれくらい水を飲ませたらよいのか、ということも飼い主さんが気にされていることのひとつです

犬や猫にとっての必要な飲水量の目安は、個体差はありますが、下記を目安にしてください。

 犬:体重x50mL/日
 猫:体重x40~60mL/日
 例)体重10kgの犬の場合、10×50mL=500mL/日

※この数値はあくまで目安です。
※飲水量は体調・体質・食事・環境などによって変化します。
※急激に飲水量に変化があった時には注意が必要です。

また、一般的には1日の飲水量が、1㎏当たり100mL以上を超えると「多飲」という病的な状態になりますので、多すぎる飲水も注意が必要です。その場合は腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、子宮蓄膿症、高カルシウム血症などの病気の可能性がありますので、動物病院を受診しましょう。

犬や猫が水を摂取しやすくするために

与える水は軟水であれば、新鮮な水道水で十分です。

ミネラルウォーターは、硬水の場合、尿結石の原因になる場合があるため与えないでください。4~5℃以下の冷水もやめましょう。

なるべくこまめに容器を洗浄し水をとりかえることが理想です。また、水を循環させる容器は、フィルターがついて定期的に交換できるものであれば衛生的に使えますので、流れる新鮮な水を好む犬や猫の飲水量をアップさせることが期待できるでしょう。

水を摂取しやすいように、飼い主さんができる工夫

  1. フードに水を加える、またはウェットフードにかえて、食事と一緒に水分を取らせる
  2. 容器の材質を変える(プラスチックから陶器など)
  3. 容器の大きさを変える(大きいものにする)
  4. 容器の高さを変える(シニアの動物は首を下げるのがつらい場合があるため、高くしてあげると飲みやすい)
  5. 水と容器を清潔にする
  6. 水を循環させて流れるようにする
  7. 水の温度を変える(冷水ではなく常温か冬場は人肌程度に温める)
  8. 水を飲める場所を増やす。違うタイプの容器をいくつか併用する
  9. 犬の場合、散歩時にこまめに水分補給させる

愛犬・愛猫のお世話にストレスを感じるのはよくないので、あまり神経質になりすぎずに、生活スタイルによっては循環型の自動給水器を利用するなど、続けやすい方法で、水を摂取させる工夫をしてみてください。

また、1日の飲水量をだいたいでよいので、把握することも重要です。なぜなら飲水量の変化は、病気の発見に非常に役立つからです。飲水量を把握する方法は、容器に入れる前に量を測り、取り替える時に再度測るとだいたいわかります。

愛犬・愛猫の「習性」を理解し、飲み方の「好み」を見つけて、お互いにストレスなく、たっぷり新鮮なお水を自分から飲むように工夫してみてください。

Editor's note!

人間に水が大切なように、犬や猫にとっても水はとても大切であることがわかりました。家族の一員である愛犬・愛猫たちが、水分不足にならないよう、日頃から注意してあげたいですね。続けやすい工夫の一つとして、循環型の自動給水器を活用するのも役立ちそうです。記事で紹介した先生のアドバイスを今日から実践して、愛犬・愛猫の健康を見守りましょう。

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